ほんとはすべて、ひらがなですが、読みやすいように漢字を混ぜて書きますね。
小さい おやまがありました。
おやまの こっちに ちょこまかくまさんが住んでいました。
おやまのこっちには のっそりくまさんが住んでいました。
ちょこまかくまさんは、働くのが大好き。
朝から晩まで忙しく、ちょこまかちょこまか働いて暮らしていました。
のっそりくまさんは、のんびりしているのが大好き。
朝も昼も夜も、のっそりのっそり、のんびりと暮らしていました。
でも、ちょこまかくまさんとのっそりくまさんは、とっても仲良しで、時々会って、
お喋りするのを、楽しみにしていました。
さて、ある、素晴らしく お天気の良い日の朝。
おやまのこっちの ちょこまかくまさんは、
「何て良い天気!今日はまず布団を干して、それから洗濯をして、掃除をして、窓ガラスを拭いて、
畑の草取りをして、花に水をやって、それから買い物にも行きましょう!」
と言うと、早速、ちょこまかちょこまかと働き始めました。
ちょうど、その頃。
おやまのこっちの のっそりくまさんは、のっそり起き上がって、
のっそりのっそり窓を開けて、
「やあ、良い天気だ。今日はのんびり日向ぼっこしながら、昼寝をすることにしよう。」
というと、のっそりのっそり、ひなたに椅子を持ち出して、ごろんと横になりました。
のっそりくまさんが、寝椅子でうとうと し始める頃、
おやまのこっちの ちょこまかくまさんは、もう、洗濯も、掃除も、買い物も、
何もかも済ませてしまいました。
「やれやれ、こんなに良い天気の日には、とてもじっとしていられないわ。
ちょっと、のっそりくまさんのとこへ行ってみましょう。
こんなに良い天気だから、あの人は、きっと、どこへも行かずに、
うちで日向ぼっこをしているに決まっている。」
おやまのこっちののっそりくまさんは、
ぐっすりひと眠りして目を覚ましました。
「やあ~、良く寝た。こんなに天気の良い日には、とても働く気になれない。
ところで、ちょこまかくまさんは、どうしているかな。 こんなに良い天気だから、あの人は、
きっと朝からちょこまかちょこまか働きまわっているんだろうな。
そのうちに、用事が済んでしまって、ここへ遊びに来るに違いない。
そうだ、お茶の用意でもしておいてあげよう。」
こういうと、のっそり立ち上がって、のっそりヤカンに火をかけました。
のっそりくまさんの台所で、ヤカンがしゅーっと音を立て始めるころ、
おやまのこっちのちょこまかくまさんは、お菓子を持って、
ちょこまかちょこまか おやまを登って、
ちょこまかちょこまか おやまを下って、
のっそりくまさんのところへやって来ました。
「やっぱり来たね。」
のっそりくまさんが言いました。
「やっぱりいたわね。」
ちょこまかくまさんが言いました。
「お菓子を焼いて来たわ。」
「お茶の用意をしておいたよ。」
のっそりくまさんがいいました。
二人は椅子に座って、たっぷり美味しいお茶を飲んで、
たっぷり美味しいお菓子を食べて、
たっぷり楽しいお喋りをしました。
やがて、夕方になったので、ちょこまかくまさんは 立ち上がって、
「それじゃあ。またね。ごちそうさま。」
と。おやまをのぼって、おやまを下って、うちに帰って行きました。
それから、ちょこまかちょこまか、洗濯物を片づけて、ちょこまかちょこまか、
うちじゅうの窓を閉めて、ベッドに入りました。
おやまのこっちの、のっそりくまさんも、
のっそり、お茶の道具を片づけて、のっそり寝椅子も片づけて、のっそりのっそり、
窓を閉めて、のっそりベッドに入りました。
それでは、みなさんおやすみなさい☆
「ちょこまかくまさんとのっそりくまさん」作 松野 正子 絵 田中 秀幸 引用